進化を続けるサーフタウン いちのみや120年史

一宮町の由来となった玉前神社


 1200年以上の歴史をもつ一宮町の名称の由来ともなった玉前神社は、中世平安時代に建立され全国でも重きを置く神社として古くから信仰を集め、上総国一宮の格式を保ってきました。 「上総十二社まつり」と称される祭りは、浜降り神事として広く知られています。玉前神社の御神体は神武天皇の生母である玉依姫命(たまよりひめのみこと)が祀られています。縁結び、子授け、安産、子育てなどにご利益があることから、とくに女性の方に大変な人気があります。 風水学的に東京から見て最大の吉方位として、開運・商売繁盛の祈願に訪れる方も多い神社です。玉前神社に関しては別のコラムで今後詳しく触れていきたいと思います。

上総一ノ宮 玉前神社(一宮町教育委員会所蔵)

 ちなみに、一宮地域の歴史を紐解こうとすれば旧石器時代(〜1万2000年前)という想像のはるか彼方から人が住んでいたようですが、ここでは古代から順に追っていくことは割愛し、おもに近代以降の一宮町の歩みに触れていきたいと思います。 近代以前から一宮町の歴史が知りたい方は、町役場のHPで公開中の「一宮町史」をご参照ください!

別荘地として人気を博した一宮町


 現在の上総一宮駅が開業したのは明治30年の西暦1897年であり、現在(2021年)から遡ること120年以上の歴史を有しております。 鉄道が敷設され海水浴場が整備されたことから、名士の別荘が100軒近く建ち並ぶリゾート地として非常に栄えました。

風情のある一宮の町並み(一宮町教育委員会所蔵)
水面が美しい一宮川(一宮町教育委員会所蔵)

 ご存じの方も多いかもしれませんが、かの文豪芥川龍之介が一宮町出身の友人堀内徒利器に誘われて、初めてこの町に来たのは大正3年(1914)、東京帝国大学英文科の学生で23歳のときで、7月から約一ヶ月を過ごしています。2回目の来訪は大正5年(1916)、現在も一宮川河口に所在する一宮館の離れで、一高時代からの友人久米正雄とひと夏を過ごし、のちの妻となる恋人塚本文(ふみ)に求婚の手紙を出したり、海水浴を楽しんだといいます。大正期の自由で闊達な雰囲気がリゾート地としての一宮町にも満ちていたのだと想像できます。

以前の一宮館(一宮町教育委員会)

 一宮町史によると、昭和初期には、関東大震災被災地虚弱児童を収容するために一宮学園が建設されました。一宮学園は、一宮町が三井八郎次郎男爵から寄贈された別荘地をときの内務省に寄贈して建設され、今も児童養護施設として残っています。もともと別荘地として全国的に有名だった一の宮町でしたが、一宮学園ができたことにより、さらに天下一の健康地と宣伝され、避暑、避寒、療養地として都会から多くの人を集めたとのことです。

以前の一宮学園(一宮町教育員会所蔵)
一宮海水浴場(一宮町教育委員会所蔵)

サーフタウンICHINOMIYAの誕生秘話


 日本におけるサーフィンのルーツは諸説あるようですが、戦後、駐留米兵を含むアメリカ人たちが神奈川や千葉の海でサーフィンする姿を見て、地元の若者たちがサーフボード型やスキムボード型の自作の板で波乗りしたのが始まりと言われています。 やがて海外から持ち込んだロングボードでサーフィンする人達や鎌倉でサーフボードを自作する人達が現れました。

 ちなみに、若大将こと加山雄三さんは、映画『ハワイの若大将』のためにハワイでサーフィンを覚え、映画が公開された翌年の1964年にハワイからサーフボードを持ち帰り、湘南の茅ヶ崎で実際にサーフィンを披露したそうです。それが、1964年6月10日付の日刊スポーツに『波乗り日本第一号 加山雄三 サーフボード作る』というタイトルで紙面を飾りました。

 1956年には経済白書が 「もはや戦後ではない」と締めくくり、時代は高度成長期を迎えるなか、50年代後半に米西海岸カリフォルニアを中心にサーフィンブームが始まり、映画や音楽、雑誌、ファッションに根付いたサーフカルチャーは日本でも若者を中心に波及していきました。

 サーフファッションが1960年代のトラッドやアイビーベースからヒッピースタイルに色濃く影響をうけた70年代に、一宮町東浪見でCHP(California Hawaii Promotion)が創業されました。

 今回は、長年にわたり日本のサーフシーンを支えてきた岡野教彦さんから70年代頃の一宮周辺のお話をお伺いしました。

岡野教彦さんからたくさんのお話をお伺いしました。(CHP本店にて撮影)

当時のサーフィン事情

 岡野さんによれば、このあたり(一宮周辺)のサーフィンの中心は太東であり、漁港脇の堤防が建造されるまでは素晴らしいレギュラーの波が立っていたそうです。 特に、77年6月のパーフェクトなレギュラーは今も色濃く記憶に残っていると言います。 ちなみには、このころはCHP前のビーチラインも整備されておらず、東京方面からこちらに来る際には現在の国道128号を使っていたそうで、国道から海に抜けた先に太東が見えてくるというロケーションだったそうです。

 また、地形が良いときには東浪見P(ポイント)でサーフィンすることもあったそうですが、当時は突堤もないので地形が決まりにくく現在のサンライズPなどでサーフィンすることはなかったそうです。岡野さんは東京都のご出身ですが、子供の頃にはよく太東に海水浴に来ていたそうで、そのころはまだサーフボードでサーフィンする人の姿はなく、板(フロート)のようなもので遊んでいた人はいたそうです。 

 岡野さんはお兄さんの影響でサーフィンをはじめたのですが、 はじめてのサーフボードは東京の神田で購入しました。 当時はショートボードという概念自体がまだなく、サーフボードといえば今で言うところのロングボードだったので、岡野さんの最初のサーフボードもロングだったそうです。 余談ですが、最初にサーフボードに取り扱っていたのは意外!?にも百貨店の緑屋(現:クレディセゾン)というのはよく知られた話です。

志田下P(釣ヶ崎海岸)の隆盛

 サーフィンをするものであれば、「波乗り道場」こと志田下Pは憧れでもあり畏敬の念を抱く場所として認識される方も多いのではないでしょうか? 2021年には、東京オリンピックの新種目となったサーフィンの試合会場として世界のトッププロによる熱いヒートが繰りひろげられたのはまだ記憶に新しいところです。

 そんな志田下Pの変遷についても、岡野さんからお聞きしました。 前述のとおり、上質なレギュラーの波が味わえた太東Pですが、漁港脇の堤防が建設されると、残念ながら以前のようなレギュラーが消えてしまいました。 しかし、その堤防の影響で志田下Pの地形が良くなったそうです。

釣ヶ崎海岸の鳥居

 当時、岬町にあるタニーサーフ(現:ASP TANYSURF)を中心に地元の若者たちなどの有志が集いサーフィン愛好会として「岬サーフィンクラブ」が設立され、岡野さんも所属したそうです。 「岬サーフィンクラブ」が日本サーフィン連盟(NSA)の勝浦支部の所属クラブとなり、岡野さんたちメンバーはそこから全日本を目指したそうです。 岡野さんから「いつのまにか志田下Pが波乗り道場なんて呼ばれだしたんだよなぁ」とお聞きして、当時のサーフィンクラブのメンバーの方たちが志田下Pで研鑽に励む姿が「道場」という名称のルーツなのかもしれないとふと思いました。

タニーサーフさんがオープンした「台東スケートボードセンター」(CHP所蔵)

現在のサーフポイントは如何にして生まれたのか

 現在の一宮町では、サンライズPをはじめ、ビーチライン沿いのどこの海岸でもサーフィンが楽しむことができます。前述したように、一宮周辺は太東でサーフィンが盛んとなり、その後志田下でも隆盛期を迎えましたが、志田下より北でサーフィンすることは少なかったといいます。 前述のとおり、東浪見は河口近くで地形がよくなると入っていたそうですが、すぐに地形が変わり安定しなかったそうです。

 80年代以降、千葉東沿岸海岸保全基本計画の一環として一宮川から太東漁港までの間に10基のヘッドランド(HL)の建設が計画されました。1988年に整備着工し、2016年頃にはおおよそ現在の外観となりました。そして、このHLにより地形が定まりサーフィンができるようになったこと、そして後述するようにビーチライン(県道30号線)が整備されたことでサーファーが集まるようになったそうです。(しかし同時にHLの建設には環境保護など様々な論点があることもあわせてお伝えしておきたいと思います。)

ちなみに、CHPさんはサンライズ前に位置しておりますが、当時はシンプルに「店前」と呼ばれていたそうです。下の写真を見てもわかるように、CHP正面のビーチライン(県道30号線)の正面には家などはなく、松林が広がる小道を抜けて砂浜まで出たそうです。 右側の写真が、皆さまも見慣れている現在の景色ですね。

CHP正面からの景色(CHP所蔵)

CHP創業当時は周辺に店などもなく正面のビーチラインもずっと狭かったそうですが、70年代に九十九里有料道路(通称:波乗り道路)の開通にともなって道路が整備され、ビーチライン沿いサーフショップが立ち並ぶようになったそうです。こうした時代の流れのなかで、HLのあいだ毎にサンライズ・ヨンライズといったポイント名で親しまれ、一年を通してコンスタントに良質な波がたつ一宮町に多くのサーファーが集まるようになりました。

以前のCHP(CHP所蔵)

 現在、新型コロナウィルスの蔓延といった未曾有の事態となり、新しい生活様式が提唱され移住や2拠点生活といった新しいライフスタイルが広がりつつあります。一宮町は以前からまちの魅力に惹かれて移住する方が多くもともと懐が深いといえますが、岡野さんをはじめ先人たちが大切に紡いできた太東・一宮のサーフィンの歴史を認識し敬意を示すことが、今よりいっそう魅力的なサーフタウンを育んでいくのに欠かせない視点だと改めて感じました。 

進化をつづけるICHINOMIYAスタイル


 これまで見てきたように、古くは大正・昭和期の名士の別荘地・保養地として繁栄した一宮町は、戦後の経済成長期の只中、60年代に爆発的なサーフィンブームのきっかけとなったカルフォルニア発祥のビーチボーイズ、ジャン&ディーンといった「サーフミュージック」やエンドレスサマー、ビッグ・ウェンズデーなどの「サーフムービー」、そしてサーファーのファッションやライフスタイルのベースとなった「ヒッピーカルチャー」などの大きなウネリをうけ、日本有数のサーフタウンとして独自の発展を遂げてきました。

 1964年の東京大会に続いて約半世紀ぶりに開催する2020東京オリンピックにおいて、サーフィンが初めて正式競技として追加され、一宮町の釣ヶ崎海岸がその競技会場として選ばれました。しかし、新型コロナウィルスの蔓延により大会の開催は1年後の2021年に延期されることとなり、大会は中止すべきといった声も上がるなか無観客での開催が決定されました。

2021年7月、一宮町釣ヶ埼海岸で開催されたサーフィン大会において、日本代表男子の五十嵐カノア選手が銀メダル、女子の都筑有夢路選手が銅メダルを獲得したことにより世界的に一宮町釣ヶ埼海岸が認知されました。

 東京駅まで特急「わかしお」で1時間の通勤距離の利便性に加え、最近では「リモートワークの普及」や「退職後の永住者」といった理由で、一宮町の定住人口が増加しています。大都市周辺においては、働き方によって住まい方も都心と郊外で二極化が進んできており、ミドルファミリー層やパワーカップル(高収入夫婦)などの属性や世代によって都内+リゾートといったようにニューノーマル(新常態)を映すような状況が進みつつあります。また、一宮町の特産品として、トマト・梨・メロン等温暖な土地柄を生かした野菜や果物が生産されており、町のふるさと納税の返礼品としても好評を得ています。令和は、始まったばかりですが、この数年の間に一宮町がどのように変化していくのか楽しみでもあります。

釣ヶ崎海岸の鳥居(出展:一宮町観光協会)

一宮町のインフラ事情~その②浄化槽って何?~

浄化槽」物件に深くかかわる重要ワードを読み解く

前回のコラムでは、「その①:知らないと怖い、水道にまつわる想定外の出費!?」として、水道管について解説しました。
今回は、はじめて田舎の土地を購入する際に、必ず確認すべき生活インフラにかかわる以下の3点ということで、二つ目は浄化槽について取り上げたいと思います。

1.対象土地に面する道路(前面道路)に水道管(上水)が通っているか
2.排水設備(浄化槽)の有無
3.対象土地に接する排水溝の有無

一宮町エリアのほとんどが浄化槽を使用!?

宮町エリアでは、区画整理された東野地区を除いて、公共下水道が整備されてないケースがほとんどです。対象土地が公共下水道に接続できない場合には、トイレ、台所やお風呂からの汚水や生活排水は敷地内に設置した浄化槽を経由して排水する必要があります。

合併処理浄化槽とは?
・し尿及び生活排水(台所・お風呂・洗面所等の排水)をあわせて処理する浄化槽です。
単独処理浄化槽とは?
・し尿のみを処理する浄化槽です

排水設備とは、建物から排出される汚水を下水道本管に導くための排水管、排水ますなどです。合併処理浄化槽による汚水処理の場合は、建物から排出される汚水を浄化槽に導くための排水管、排水ますなどです。

汚水・生活排水の処理について

し尿(トイレに排出した排泄物等)及び生活雑排水(台所や風呂、洗濯水等、トイレ以外で排出した汚水)などの生活排水は、イラストのとおり大きく4つに分類されます。

上記イラストの下段には公共下水道や農業・漁業集落排水や合併処理浄化槽のように生活排水を全て処理するものと、上段の単独処理浄化槽や汲み取り式トイレといった、し尿だけを処理し、生活雑排水を未処理のまま放流するものがあります。ここでサラッと「浄化槽」という聞きなれない用語がでてきましたが、実はこれが一宮町エリアで土地を購入する際に頻出する重要ワードですので、順をおって説明していきたいと思います。

ちなみに、都市部では公共下水道が整備されていますので、下図のようにトイレ、台所やお風呂からの汚水・生活雑排水は汚水桝を経て下水道管に排出されます。

浄化槽の構造

浄化槽は水中の微生物の働きによって汚水を浄化する装置です。
微生物は、空気のあるところで活動するもの(好気性微生物)と、空気のないところで活動するもの(嫌気性微生物)の大きく2つに分けられ、浄化槽はこの2つの種類の微生物の力をうまく活用できるよう、いくつかの槽に区切られています。
一般的な浄化槽の構造は、嫌気性微生物が活躍する一次処理(固液分離)、好気性微生物が活躍する二次処理(生物処理)、汚泥(汚れを食べた微生物の塊)の沈殿分離、消毒のための装置で構成されています。

合併処理浄化槽の設置にかかる費用

合併処理浄化槽の設置にかかる費用は、本体価格と工事費用からなりますが、凡その相場は下表のとおりです。なお、浄化槽のサイズは、JIS規格(日本産業規格)で算定の基準において面積当たりの処理人数が定められており、この算定基準で求めたものが、浄化槽の大きさ(人槽)となります。

面積あたりの浄化槽サイズ目安は以下をご参照ください。
130㎡(約40坪)以下→5人槽
130㎡(約40坪)以上→7人槽
2世帯住宅→10人槽

浄化槽設置風景①
浄化槽設置風景②
浄化槽設置風景③

浄化槽の一般的な取扱い

都市部でお住まい方は、浄化槽に馴染みが薄いと思いますが、浄化槽の点検・清掃・検査は法律で義務付けられおり、違反した者には罰金等が科せられる場合がありますので注意が必要です。(以下、一宮町役場HPの情報となります。)

① 法定検査(浄化槽設置後の水質検査)
浄化槽使用開始後3ケ月を経過した時点から5ケ月以内に受けなければなりません。
※下記の千葉県知事指定検査機関にお問合せしてください。
社団法人千葉県浄化槽検査センター 電話:043-246-6283

② 保守点検
定期的に年3回以上行わなくてはなりません。(浄化槽法第10条)
※浄化槽の構造により、保守点検の回数が違います。
※下記の業者にお問合せしてください。
清掃業者:長生郡市広域市町村圏組合許可業者
(有)マツオ産業   電話:0475-22-6920
セントラル美装(株) 電話:0475-32-4582
他283社以上あります。

③ 清掃
年1回以上(単独処理浄化槽については6ケ月に1回以上)実施しなくてはなりません。
(有)マツオ産業   電話:0475-22-6920
セントラル美装(株) 電話:0475-32-4582
他2社あります。

④ 法定検査(定期検査)
年1回受けなければなりません。 (浄化槽法第11条)
※日々の保守点検及び清掃が適正に行われ、浄化槽が所期の機能を発揮しているかを確認するために実施する水質等の検査です。
※下記の千葉県知事指定検査機関にお問合せしてください。
検査手数料はこちらをご参照ください。

一宮町の浄化槽に係る補助金

一宮町では、現在、汲み取りや単独浄化槽をお使いの方が、合併処理浄化槽に交換する場合に補助金が交付されます。補助金でカバーされるのはあくまでも交換であり、新設する場合(新築、建て替え及び増改築による浄化槽の設置)は補助の対象とならないので注意が必要です。

交付申請から補助金交付までのフローチャートなど、詳細は一宮町役場の「合併処理浄化槽の補助金について」をご参照ください。

最後に

一宮町エリアでは、土地を購入し建物を新築するにしろ、中古物件を購入するにしろ、多くの場合で浄化槽の設置が深くかかわってきますので、まずは現況を確認する必要があるでしょう。また、放流先が確保できない場合などは、設置できる浄化槽の大きさ(人槽区分)に制限があるので、町役場の都市環境課に問合せるのが良いでしょう。

一宮町役場 都市環境課 環境係
電話:0475-42-1430
FAX:0475-40-1075

一宮町のインフラ事情~その①水道管布設と引込費用~

知らないと怖い、水道にまつわる追加費用

日本有数のサーフタウンとして、一段と人気が高まる一宮町エリア。コロナ禍のなか大手企業を中心にテレワークが浸透していることが影響してるのか、最近では県外からの移住や二拠点生活(デュアルライフ)といった新しいライフスタイルをもとめて一宮町エリアで土地をお探しになる方が増えています。 これは、一宮町が都心までのアクセスが良いこと(「JR外房線」上総一宮駅~東京駅間は乗り換えなしで約1時間30分程度(「特急わかしお」なら約1時間))、そして歴史あるサーフタウンではありながら今なお独自の進化をつづけていることが、ひと際人々の目を引く存在となっているからだと思います。

しかしながら、東京から近いといってもそこは海沿いの小さな町、、、まだまだ農地も多く、都市エリアで家を建てる場合と勝手が違うこともしばしば。土地以外で想定外の費用がかかったりすることがあるので、土地を探す際には十分注意が必要です。特に、購入予定の土地(以下、「対象土地」といいます)の地目(不動産登記法にもとづいて定められている土地の区分)が「田」や「畑」といった農地に該当する場合には、農地転用といった手続きが必要である他、上下水道等の生活インフラが確保されていないケースがあります。

本稿では、はじめて田舎の土地を購入する際に、必ず確認すべき生活インフラにかかわる以下の3つのポイントを解説したいと思います。

1.対象土地に面する道路(前面道路)に水道管(上水)が通っているか
2.汚水・生活排水の処理はどうなっているか
3.対象土地に接する排水溝の有無

上記は土地購入にあたり不動産会社から説明がなされる事項ではありますが、あらかじめチェックポイントをおさえておくことで、候補の絞り込みなど物件選びが効率的になるかと思います。

1.対象土地に接する道路(前面道路)に水道管(上水)が通っているか

一宮町エリアでは、元来農地として利用されていた土地を住宅用地として販売するケースがしばしば見受けられます。そのような農地を購入して家を建てようとする場合、購入土地に接する道路(前面道路)に水道本管が通っているかで、トータルコストが大きく変わる可能性があります。ちなみに、一宮町の東野地区など土地区画整理がおこなわれたエリアは水道本管が整備されています。 

なお、水道本管の布設状況については、調査したい場所の管轄(受持ち区域)の水道事務所・支所窓口でご確認することもできますが、通常は不動産会社などの仲介業者が物件調査の際に水道局から「水道管網図」と呼ばれる図面を取得していますので、対象土地の仲介業者に聞いてみるのが早いでしょう。

工事費用について
通常、水道本管(以下、「配水管」といいます)の宅地への引き込み工事費用は自己負担となります。また、イラスト図のように対象土地の前面道路に配水管が通っていない場合には、新設配水管を通すための布設工事費用を負担しなければならず、その費用は高額になることが多く注意が必要です。

~対象土地の前面道路に配水管が通っている場合~

前面道路に配水管が通っており、対象土地への水道管(給水管)の引き込みがある場合には工事は不要です。一方、水道管の引き込みがさていない場合には水道引き込み工事が必要となります。イメージ図にあるように、水道管引き込み工事は道路に溝を掘って配管する作業が発生するため、配水管との距離が遠くなるほど費用が高額になります。なお、水道管引き込み工事の費用は、路面の条件等によっても異なるので一概には言えませんが1mにつき2~3万円程度かかります。なお、前面道路が厚みのあるアスファルト舗装の場合には溝を掘るのに時間がかかるため、費用が嵩む要因となります。また、幹線道路沿いなど交通量の多い道路が対象土地の前面道路となる場合、交通誘導や警備員を配置する費用などが工事費用に上乗せされます。ちなみに、引き込みする水道管の口径には13mm、20mm、25mmなどの種類があります。古い13mmのタイプは水圧が低く、二世帯住宅など水道使用量が多い場合は20mm以上が一般的です。

~対象土地の前面道路に配水管が通っていない場合~

前出のイラスト図のように、対象土地の前面道路に配水管が通っていない場合には、新しい配水管を前面道路まで延ばしてくる必要があります。(なお、配水管それ自体の材料費は自治体の負担となります)この場合、引き込み工事費用に加えて、新設配水管の布設費用を自己負担することになります。
一宮町エリアも現況が農地の場合には、前面道路に配水管がとどいていないことも多いので、対象土地の仲介業者に聞いてみてください。なお、千葉県では新設の配水管の布設に対して「配水管の布設に対して負担軽減措置の制度」が設けており、制度要綱に該当する場合には自治体が布設工事費を全額/一部負担するケースもありますので、確認してみるのがよいでしょう。
もうひとつ注意すべき点として、前面道路が他人の所有する私道である場合、所有者から道路掘削の承諾をとっていなければ、配水管の敷設工事ができなくなります。このため、通常は承諾書といった形で書面を取り交わす必要がありますが、当該私道の所有者と連絡が取れない、なかなかハンコを押してくれない(ハンコ代を要求してくる)等、トラブルになるケースも少なくないので承諾書の有無や私道の所有者について事前に仲介業者に確認しておくのが肝要です。

工事費以外の費用
水道管引き込み工事だけでも、相応のコストは見込んでおく必要があるのですが、実は工事費以外にも発生する費用が2つあります。
・給水申込納付金
・開発負担金

給水申込納付金」及び「開発負担金」は、自治体によっては名称が異なる場合があるそうですが、千葉県では上記の名称が使われております。
「給水申込納付金」とは、水道を新しく引いたり、給水管(水道メーター)の口径を大きくする等する場合に、申込者が市へ納付する負担金のことです。 これは、水道利用者間の負担の公平と水道料金の高額化の抑制を図るため、新しく水道を利用する場合は、必要な費用の一部として口径別加入金を負担することで、利用者間の負担の公平を図るものとされています。(ちなみに、東京23区内では新規利用の場合でも納付金等の制度自体がないようですが、23区以外や他の地域では水道管設置の予算の関係や水の利権の関係で分担金を納付するケースが多いようです。)

長生郡(一宮町含む)エリアでは、以下の給水申込納付金がかかります。

「開発負担金」とは、新しく水道を引く場合で、かつ特に大量の水を使用する場合に必要となります。具体的には、一日に最大5立方メートル以上の水を使用する場合には建築物負担金を、宅地の造成する場合で1,000平方メートル以上の宅地造成するときには宅地負担金を、それぞれ納める必要があります。

その他留意事項
・給水管の種類・埋設時期
上水道が宅地内にひかれている場合でも、なかには旧式の「鉛管」や「鉄管」である場合があり、予期せぬ取り換え工事が必要となるケースもあります。取り換え工事費用は、敷地や建物の状況にもよりますが、三桁万円台になることもありますので、十分に注意が必要です。また、旧式の管は、さびによる劣化が生じてる場合があり、匂いや味、健康面への影響など、不快に感じる可能性があります。ゆえに、給水管がいつ頃埋設されたか、材質が何であるかを確認することが大切です。
なお、現在の水道管は「ステンレス鋼管」や「塩ビ管(HIVP管等)」などが一般的で、耐久性、耐食性、耐熱性に優れた素材とされています。

一般的に、不動産仲介業者が行う「重要事項説明」では、単に上水道の引き込みの有無や管の太さを説明するにとどまるため、管轄地域内の給水装置図面を保管している水道局に問い合わせるのが確実かと思います。

・他人の隣地を跨いでいる場合
古くから住宅が密集しているような地域や昔に分譲された土地などは、引き込み管を数軒でシェアしていたり、他人の隣地を経由して引き込みされているケースがあります。 このような場合、漏水事故が起こった場合に隣人トラブルになったり、水圧が不安定だったり、建築や土地利用に制限がかかる可能性があります。 こういった“昔の事情“に関しては、対象土地を相続した人も聞かされておらず、知らないことも多いので、事前に調査する必要があるでしょう。
このように、水道水(上水)ひとつ取ってもこれだけ確認すべき事項がありますし、本稿ですべてを網羅しているわけではありません。したがって、失敗しない土地探しをするには、仲介業者や自治体などとうまく連携しながら進めていくのがよいでしょう。

地震が起きると液状化!?一宮エリアの地質を知っておこう

日本は地震や台風など自然災害が多い事で知られています。特に沿岸地域への移住やセカンドハウスの購入を検討されている方にとっては、地震による津波の影響や液状化現象は多くの方が気になっているトピックかと思います。本稿では、県外からも多くのサーファーが訪れる有数のサーフタウンとして、ますます人気が高まる一宮町エリアを考察したいと思います。

弊社一宮不動産も地域の発展に微力ながらお手伝いするにあたり、地域や住まいなどに関する情報の提供をしていきたいと考えております。一宮エリアの液状化の度合いについて、千葉県が平成23年度(2011年)に行った液状化調査等を参考にしております。 

液状化現象の被害

東日本大震災によって引き起こされた大規模な液状化現象は、特に海浜エリアのライフ・ラインに多大の被害をもたしました。

2013年2月の日経新聞の記事によると、浦安市の面積の86%が液状化被害に見舞われ、震災発生から2年が過ぎようとしている今でも傷痕が残ると報じられました。液状化現象では、建物の倒壊や沈下、地割れ、泥水の噴水による噴砂や冠水、水道管などの地下管やマンホールが浮き上がり破損してしまう、などの被害が確認されています。

なお、一宮町における東日本大震災による液状化現象は報告されなかったものの、県の報告書によれば床上浸水30棟・床下浸水が28棟の被害が発生しました。

一宮町の液状化マップ

一般的に、水分を多く含む埋立地や干拓地、海岸や河川敷などの比較的地盤がゆるく地下水位が高い砂地盤で発生しやすいといわれています。一宮町エリアの状況を知るには、町役場から公表されている液状化マップを参照するとよいでしょう。

(URL:https://www.town.ichinomiya.chiba.jp/assets/files/kinkyu/h260515ekijokamap.pdf)

このマップでは、液状化のしやすさを色分けしており、震度(5強)に対応し、東日本大震災や南海トラフ沿い地震のような2~3分程度の長時間継続する揺れを想定して作成されています。

マップをみてみると、意外と思われるかもしれませんが、海沿いの千葉県道30号飯岡一宮線(九十九里ビーチライン)でも、赤色で例示される液状化“しやすい“エリアはありません。 

上総一ノ宮駅周辺、一宮川沿いや駅から真東の沿岸部(弊社があるエリアです、、)は“ややしやすい”エリアに含まれておりますが、東浪見のほうは青色の“きわめてしにくい”エリアが多いことがわかります。

購入前のチェックポイント

  • 聞き取り

近くに河川などがある場合、浸水等が発生したことがあるどうかなど、地場の不動産会社に確認するか、近隣の住民の方に聞いてみるのもよいと思います。

  • 地盤調査報告書

新築の建売住宅の購入を検討している場合、売主があらかじめ地盤調査を行なっているので、要望すれば地盤調査報告書を提示してもらうことが可能です。書面の内容は難しいので、売主や仲介の不動産会社から説明してもらうことをおすすめします。 

  • 近隣の地盤データ

地盤調査報告書のない物件を購入する場合、お住まいの自治体や地盤調査会社から、近隣の地盤のデータを見せてもらうことが可能です。また、インターネットで検索すると、民間の地盤調査会社が公開しているデータを閲覧できます。会社によっては、役所のデータを確認できるところもあるので、利用してみるのもよいでしょう。

最後に

更地や昔の住宅などは地盤調査をせずに建ててしまうことも少なくなかったので、調査自体行なわれていない物件である可能性が高いです。また、一宮町では地目が農地であることも多いので、この場合にも地盤調査をしていなことがほとんどです。

地盤に関するデータが取得できない場合、売主の承諾を前提として契約前に地盤調査が可能かどうかを担当の不動産会社に相談してみましょう。 ただし、現実的には土地の購入に際して買主が契約前に地盤調査しているケースは稀ですが、契約書の特約条項として物件引渡し前の地盤調査の許可や地盤改良が必要な場合の措置など検討するのも一案かもしれません。

不動産の購入は一生に何度もない重要な買い物ですので、様々な角度や観点から対象物件を精査することが欠かせません。 本稿で参照した液状化マップのように自治体から有益な情報が発信されていますので、町役場に直接お問合せいただくのでもよいかと思います。 

ご参考:一宮町地域防災計画について

地域防災計画は、災害対策基本法第42条に基づき、町長を会長とする防災関係機関で構成される「一宮町防災会議」が定める計画で、平成26年2月末に修正案が策定されました。
本計画は、災害に関する予防計画、応急対策計画、復旧・復興計画等一連の対策を実施するための事務を定めています。
また、地域防災計画のほか、津波ハザードマップ、揺れやすさ液状化マップなどは以下のURLをご参照ください。

(URL:https://www.town.ichinomiya.chiba.jp/kinkyu/3/1.html